霧の都ロンドン!ヨーロッパ和道会空手カップ2003開催大和撫子! 平良恵夢(宇都宮文星高校)、霧中に光差す!形は荒川尊祐死守
 招待国日本を含む22ヶ国200名の選手が、ロンドンへ集結した。
 和道会日本代表は、国内で数回の選考会を勝ち抜いた少数精鋭6名、中でも期待されたのが昨年、全空連全日本大会でも準優勝、ナショナルチ−ムでもある樋口大樹選手−80kg(直富商事勤務)同じくナショナルチームの佐藤愛美選手:+60kg(宇都宮文星高校)の2名、そして各国の大会で経験を積み、ヨーロッパスタイルの組手を操る阿部恭久選手:−70kg(ワールドアスリートサポート社役員)、あの西村誠司先生から常時指導を受けている廣渡了紹選手:+80kg(福岡大学)、そして日本選手最年長36歳の荒川尊祐選手:個人形(白水修養会館)そして今大会の主役、鬼監督で有名?な宇都宮文星高校の平良恵夢選手:−50kgである。また、監督に近藤誠司先生、コーチに鬼の松本俊夫先生が同行した。

 大会は前評判通りロシア勢が組手において頭一つ抜きに出ている様相、結局男女共に団体戦を持っていかれる。特に、前後左右斜角からの変則的なステップに膝から先を内外に振り分ける回し蹴りに加え、決してフェイントではない極め技としての跳び後ろ回し蹴りまでもコントロールして出してくる。実際、廣渡選手もその攻撃をもらい反応できないまま苦汁を飲むこととなった。逆に団体1回戦、対スエーデンでは日本エースの樋口選手が豪快な裏回し蹴りを極める場面も見られたが、2回戦対ドイツ戦では土をつけられる。形競技では日本から昨年和道会全国大会で優勝している荒川選手がエントリー、国内大会とは違いフラッグ式のトーナメント形式での試合、5回戦を戦い抜き決勝では得意形「ワンシュー」でうれしい優勝となった。

平良恵夢 高校生ながら金メダルを手にする!
 若干高校生ながら、持ち前の攻撃力で決勝まで無難に勝ち進む。決勝でも、途中追いつかれる場面もあったが集中力と突き技の勝る平良選手、勝利は平良へ微笑んだ。本人談:「高校生、最後の大会で優勝出来た事はすごくうれしいです。初めての海外試合では不安と緊張でいっぱいでした。外人は突きよりも蹴りを多く使っていて、自由な組手をしていると思いました。今回の試合では、相手のペースになったら絶対負けると思っていたので自分のペースで試合が出来た事にすごく満足しています。この大会では、現地の人達や先生、一緒に行った先輩や仲間の応援があったおかげで優勝出来たと思っています。すごく感謝しています。」進学を希望する平良選手、学連での活躍を期待したいところだ。
 また、その他の選手も試合進行時間が大幅に遅れペースが掴めないながらも(結局、大会は夜10時に閉会)、三選手が3位入賞する健闘を見せた。

帰国、肩の荷が下りた帰りの飛行機の中、お疲れの所コーチ陣・各選手にコメントを頂いたのでここに記する。
阿部恭久:−70kg 第3位
 今回この様な機会を与えて頂き、心より感謝しております。
 ナショナルチームキャプテンの樋口選手と同行することができ、とても勉強になりました。今後も彼をみならい頑張っていきます。

樋口大樹:−80kg ベスト16
 今回の大会では、団体・個人戦共に、外人との遠い間合いの中で、自分から積極的にツメ、相手にプレッシャーを与え、自分の間合いで試合を運べたが、勝負所で技が出ない時にポイントを取られてしまった。先手の気持ではいたが技の思い切りに欠けてしまった。これらの反省をこれからの大会に生かしていきたい。

廣渡了紹:+80kg 第3位
 今回の大会で3位入賞を果たしましたが、自分にとっては不名誉な3位であったと確信しています。それは、自分よりも遥かに大きな相手に対して臆してしまい、いつもの様な攻撃が出来なかったこと、また外国人特有の柔らかなステップ、そしてそれからの蹴りに対して反応できなかったことなどを踏まえると、相手との間合いの取り方に大きな課題を発見することが出来ました。この他にも多くの問題点が露呈し、自分にとって今回の惨敗は今後の空手道人生において大きな糧になると信じています。この経験を今後の練習に生かし、更に飛躍できるよう頑張ります。

佐藤愛美:+60kg 第3位
 今回、3位に入賞することが出来ました。今回の大会はコーチとして松本先生が一緒だったので先生にびっちりと指導して頂きました。日本と違って時間が大幅にづれたりと調整するのが難しかったですが、先生自ら自分の相手をしてくれてアップすることが出来ました。私の得意技は蹴りだったのですが、日本ではポイントを取ることが出来ても外人相手には全く効かず、入ったとしても弱いと言われてしまいました。そのため、中段突きを中心にポイントを取りました。準決勝で先取りで負けてしまい敗者復活戦で3位に入ることが出来たのですが、自分としてはとても悔いの残る試合をしてしまったと思っています。この反省を生かし今後、より一層大きくなって日本でも海外でも活躍できる選手になりたいです。有難うございました。

荒川尊祐:男子形 優勝
 先ず、優勝出来たことをうれしく思います。しかしこれまで、昨年ロシアで行われたワールドチャンピオン大会では2位、そして9年前北欧ヨーロッパ大会でも組手68kg2位とヨーロッパでは万年2位、それに今回は試合1週間前から肩に炎症があり本番直前まで激痛でまともに突きが出せず最悪のコンディション、そんな中、松本コーチが知ってか知らずか「突きが遅い、拳の捻りをフニッシュ時に・・」など直前約30分指導頂く。鬼コーチ(失礼、私の昔からのイメージ)を前に肩が痛いとも言えずただ突くのみ・・・そしてこれが不思議なもので、その後痛みが和らぎ(麻痺したのかな?笑)念願の優勝を取ることができました。
 古巣である偶成会、高木秀穂師範に師事して今年で10年、皆さんに支えられ一つ節目が出来ました。今大会は私にとって大きな意味のあるものとなりました。関係者の皆さんに感謝いたします。
 最後に、日本を発つ前に、指導する道場の練習生達が私を円陣で囲み激励してくれました。家族と練習生が心の支えとなりました。有難うございました。

近藤誠司監督
 この6日間という期間では、私と選手達との信頼関係を作るにはあまりにも短い、そんな現状で、監督である私が各選手に求める事は自主管理です。自分のペースを保ち競技で最高のパフォーマンスを発揮する。しかし、こんな状況の中、選手達は良く頑張りました。でも、もっとチーム作りをする時間がほしかった・・・

松本俊夫コーチ
 課題はパワー不足、体作りをしなければ体格で勝る外国勢には勝てない。皆さんのこれからに期待する!

総括
 2005年には和道会ワールドカップが開催される。おそらく台風の目はヨーロッパ勢になるだろう。近年組手競技において日本選手が表彰台最上段に立つのに苦戦を強いられている。残された時間は1年半、バレーやサッカーでは世界との距離が縮まりつつある、日本流の必勝法を試行錯誤しながら見出しているからだろう。
 これからは、具体的な技術・戦術の指標、そして早い段階からの対外人稽古の導入など対策を練らなければヨーロピアンスタイルを切り崩すには難しい、まったくやりがいのあることばかりである。2005年は日本復権の年である。

<戻る>