▲野路一弘 先生
7月6日夕方6時、町田にある南第三小学校の体育館を訪れた。この日は、立っているだけで汗が吹き出してくるほどの猛暑。体育館の中はさらに蒸し暑い。すでに練習は始まっていて、子供たちの顔は汗でビッショリになっている。みんなかわいい声で挨拶をしてくれる。そんな中、支部長の野路先生がニコニコ顔でご登場。とても優しそうな印象の方だ。

 「町田誠空会」は、昭和53年に公立小学校のクラブとして発足したのが始まり。その後、荒川通先生を師範として迎えられた。その時、和道会に加盟。その名を「町田誠空会」とした。59年には町田市空手道連盟にも加盟。大分県に姉妹支部の「竹田誠空会」も発足している。一時は存続を危ぶまれた時期もあったそうだが、多方面からの協力のもと今に至っている。現在、会員35名。『楽しむ空手』をモットーに、幼稚園児から一般生までの幅広い年齢層の選手が一同に稽古に励んでいる。

 この日、数人の選手が間近に段審査を控えていた。時折、数人は別練習に専念する姿も見られたが、大方は基本稽古から全員で取り組んでいく。年齢の低い選手が多いので、練習風景も何だかほほえましい。足取りもときどき不安気な様子。指導にあたる野路先生は口調は穏やかだが、小さな選手にも足の位置・形など細かくしっかりと稽古をつけていく。野路先生曰く、「うちは荒川先生の教えである基本をとても大事にしています。基本がないと結局ダメですよ。だから基本練習にはたっぷり時間をかけます。小さな子供は飽きてしまうこともありますが、それでもやり続けます。」と厳しい一面も。この道場からは、先日の東京世界女子・個人組手オープンで見事優勝を果たした渋谷朋美選手(現在ナショナルチームメンバー)を始め、インターハイや全日本出場経験者を多数輩出している。選手たちの大きな飛躍はこの地道な基本練習が土台となっている。先生の信念ある教えが子供たちの活躍につながっている証拠である。

▲このちびっこたちも基本からみっちりと稽古する

さらにこの会の特徴は半数ぐらいが女子選手だということだ。先ほどの渋谷選手の他にも女性の先輩選手の活躍が目立つ。伺ってみると、「女子選手でも男子選手とどんどん組手をさせています。だから女の子の成長がめざましい。まあ、多少かかあ殿下なんですが。」と笑いながらおっしゃられた。さらに先生は空手の指導をスキーのジャンプに例えられた。子供たちが自分の力で飛べたこと、それを喜びにしてほしい。そして途中であきらめず、自分の力で加速していく。それを助け、見守っていきたいとのこと。そんな温かい先生にたくさんの選手の父母の方々も協力を惜しまないのだという。

 最後に今後の目標をお聞きすると、「変わらずにやっていきたい」との一言。変わらない基本をしっかり守り続ける。だから卒業していった選手たちがいつでも帰ってこられる。そして活躍している先輩たちの姿が、さらに若い世代の選手たちを刺激し、育成させる。『基本に始まり、基本に終わる』。そんなシンプルで強い信念がみんなをつなぎ、団結力のある会を作り上げている。

▲女の子はここの出世頭だ