7月30日(月)快晴
6:30起床。
新しいホテルのブレックファーストメニューは高いだけあって種類が多く、素晴らしい朝食だった。山口先生、藤野君興奮しているようだ。一日4レッスン受けるといっているが、きつくて持たないだろう。
8:00ー9:00形フランスの形2位の先生。
9:15−10:30黒帯クラス西村指導。一発目に黒帯クラスなので気合いが入る。山口先生を相手にデモンストレーションを行い、見せる。山口先生にはそんなに当ててないのだが、痛そうな顔をされる。拍手喝采の中無事終了。今年で10年目なので飽きられることないように工夫して西村なら見てみたい受けてみたいと思われるようなレッスン内容にしなければならない。KJCにて昼食を摂り、午後は16:30−17:45(4−5級)なので内容を落として、工夫する。
しかし、いつも思うことだが、年輩の方々が汗をいっぱい出して一生懸命練習される姿は、日本の年輩者はここまでやらないことを考えれば、素晴らしいことと思う。ソールドアウトしたタイボウのような格好良くて、運動量に優れたスポーツと比べ、魅力としては空手道としての精神的な奥行きのある指導をしなければ、今後とも飽きられるだろう。モアー先生によればヨーロッパでは空手道人口が減ってきているそうだ。空手道は今後小生の持論だが、競技としてのスポーツ空手と武道としての生涯空手とはっきりと分けて、指導していくことが、大切ではなかろうか?ぜひ今後とも考慮したい。
夜はウエルカムパーティーがバーレンガーデンで開催されるので21:00参加する。満杯の店の中で紹介される。なかなか良い雰囲気で騒ぐのが好きな連中だった。町で腹が減ったのでサンドイッチを食べ、23:00帰宅。まだ、スーツケースが着いていない。パンツを履けなくなって3日たつ。着替えが欲しいよー。明日のために寝る。

7月31日(火)快晴
6:30電話で起こされる。小生の授業は11:45からなのでゆっくりしたいのだが、山口先生達が8:00からのレッスンを受けるので送って上げる。一度ホテルに帰り朝食を食べ部屋で休む。寝込んでしまった。やはり暑い中での気合いを入れた指導は、体力を使う。国際交流基金の方が内容的には楽か。

11:45−13:00(6−7級)西村指導。初めて1−2年未満の人達ばかりだが、やはり熱心に取り組む。全体的に女性の方が多いようだ。
昼食を摂りすぐに14:00−15:15(1−3級)のレッスン。
エジプトチーム、フィンランド、スイスなどの選手も参加してきたので、会場が満杯である。エジプトチームが期待してきているので1−3級には悪いが高度に内容を変える。デモンストレーションで拍手が起きて、良いムードだつた。エジプトチームから写真責めに合う。コーチは15年前くらいに交流基金で行ったときのことを覚えていた人でなかなかフランクなチームだった。
また、エジプトチームの女性を指導しているとき体に触るとキャーキャー言うので喜んでいるのかと思ったら、イスラムの教えで男性からさわられないように決まっているそうだ。頭にはスカーフを巻いていて試合もその姿で行うとのこと。ホテルに帰りスーツケースがやっと着いたので着替える。3日ぶりのパンツは懐かしい。

20:00町で一軒の中華料理店に行き夕食。ガーデンレストランで味もまあまあで合った。23:30就寝。


8月1日(水)快晴
今日は午後からは、インストラクターの写真撮影会が予定されていて指導はワンレッスンで良いので、イギリス世界王者オットーさんのミットトレーニングを覗く。11月に行う西村の組手テクニックセミナーでミットトレーニングを取り入れるために勉強する。
全日本もミットのリズムが必要で、どうしても基本中心でボクシングのようなことはしたくないと言うか、空手は基本だという人が多いので、試合競技で後れをとってしまう。日本の大先生方は試合でのリズムは別物という認識がない。ヨーロッパの連中は試合競技に勝てる方法を考えて進化して行っているのだが、日本の大先生は一撃必殺の間合いで戦法を考えているので、試合競技にも通じるように変化していかなければならないが、考えていないようだ。良いトレーニングを吸収し、今後の日本チームのためにも取り入れていきたい。

10:15−11:30(14歳以下の子供クラス)どの国の子供でも一緒で、全然集中しないので、遊びながら体力が付くやり方をする。しかし、そんな中にも優れた動きをしてしまう子供もいるので驚いてしまう。
また、気合いを入れろと言うと「キアイ」というので笑ってしまう。何度も訂正するがこちらが気合いというと同じ言葉を言ってしまうのか、全然直らない。

午後は2−300の人が集まってのサイン・写真会である。やはりタイボウのビリー・ブランコ氏には人だかりであった。20年前に一緒にサンタクララのワールドゲームスに出場したことがあり、遊びでバスケットボールのリングの鎖を飛んで蹴っていた事を思い出す。しかし、肩書きに7度の世界大会優勝とあるがアメリカ特有の「ハッタリ」であろう。現在はタイボウは大成功で、空手道よりも高い授業料なのに早々とチケット売り切れで、体育館があふれるほどの人気である。確かに運動効果は抜群で、発汗作用は高い。また、ファッション性、音楽などの効果もあり、若い人に人気の程が理解できる。空手道も負けていられず、エアロビクスにはない年少からの体力・礼儀精神性、有効格闘性、年輩でも出来る形の体力増加有効性、など前面に押し出して進化していかないと、思う。
ヨーロッパ全体では空手道愛好者が現象状態であるとのこと。試合ルールそのものが何とか考えねば、今のままではオリンピック入りは難しいと思われる。JKCで15:00−18:00まで筋力トレーニングに励む。山口先生も張り切っていたが、だんだん口数が少なくなってきたので早めに切り上げる。
夕食は町に出て、中東での食べ物であるスライスした肉を野菜と挟んだサンドイッチを食べる。なかなか旨い。
24:00就寝。

8月2日(木)快晴
6:30電話で起こされる。
朝は涼しいし、旨い朝食なので満足である。今日は二回目の今合宿の中で参加者が一番多い1−3級クラス9:15−01:30を指導する。前回はパンチ中心だったので、キックテクニックとする。帯を使ったトレーニングが好評で受けた。どこでも小生の編み出したスゥィングキックは驚いていただける。崩しと蹴りが今後の世界ニュールールで注目されるので、他の先生方もキック中心であった。午後はドイツ優勝者のアザディのミットトレーニングを見学。その後のタイボウも大入りだった。指導の最終回である17:45−19:00(8−7級クラス)を行う。全くの初心者ばかりなので、礼儀作法、体力トレーニングに時間を割き、みっちりと行った。

20:00−22:30マスターカップ大会ラベンスブルグ町の人達全員が来たかと思うほどの大入り満員である。
会場は約3,000人の観客で熱気があり、個人戦(8名)男女団体戦(エジプト対ドイツ混合チーム)が行われ、数多くのデモンストレーションがあり、コートひとつを高さ1?ぐらいまで上げ、観客を意識したあきない内容の大会である。何とエジプトが男女団体戦は制する。エジプトは元気があって、前に出ていく姿は日本チームが忘れた気合いの組手だった。
ドイツは昨年の世界大会で優秀な選手が引退し、若手ばりとは言え小柄なエジプトチームの完勝だった。日本チームも見習いたいものである。個人戦はスイス人が制した。何と優勝者には1000マルク(6万円)が奨励金として出る。タイボウのデモンストレーションもあり、ビリー・ブランコが盛んにお辞儀をするのが印象的だった。ドイツでは大流行しており、ドイツチームタイボウのチーフインストラクターの試験も行ってすごい人数が受けていた。モアー先生が来年はアメリカでサマーキャンプのアイデアがあるとのこと。きっと受けるに違いない。
レストランも開いてないので、ホテルに帰り山口先生の持ち込んだカップラーメンを食べて寝る。

8月3日(金)晴れ
山口・藤野両氏のために8:00−9:15形のクラスに連れていく。
その後フランスコーチのリガルノ氏の指導を見学。どちらかというと見せ場を作らないと言うか、特別見るべき技術ではないようだ。昼食後イギリスのオットー氏のレッスンを見学。やはり旨い。必ずジョークを飛ばし、笑わせるが見せるときは、生徒が出来ないような技を見せ、会場を沸かせる。最後には拍手で終わり、生徒が駆け寄って握手を求める姿が多い。
選手引退後ずいぶん旨くなったなと感じた。一度日本でもセミナーを呼んで行ってみたいものだ。

最後授業は山口・藤野好評のイタリア・ファガッツォ先生の「ジオン」教室である。本当に礼儀正しい人で、見ていて気持ち良いものである。かけ声がすごく、いつも気合いが入り過ぎなのかかすれ声である。見ていると番号を掛けて、形をやらせるとき、両肩がふるえるほど気合い入れるので、いつ頭の血管が切れるかと心配であった。
彼の道場の生徒もいつも一緒で10人ぐらいまとまって行動している。人柄が伝わってくるような先生である。

町の中華料理を食べ、21:00さよならパーティー。バーテーンガーデンで行われ、例年のごとく、盛り上がったダンスパーティーになった。23:00頃暑いので帰ろうかとしたら、ドイツ新コーチヨルダム氏がテキーラを一本持ってきて、乾杯の飲み比べとなった。とんでもないことになったと思ったら、グンターモアーが乱入してきて、2本目を開ける。ドイツ人に負けるかと思い気合い入れて飲んでいたら、久しぶりに酔っぱらう。
最後は上半身裸になってディスコ会場で、3本目のテキーラを開け、前屈中段突きのポーズでラッパ飲みしていた。
自動車を運転するとき、山口先生がハンドルを持ち、小生がアクセルの担当で藤野君が叫びながら、ホテルに帰る。朝3時だった。



8月4日(土)曇り一時スコール
頭が痛い、完全に二日酔いで寝ていたかったが、両名から観光に連れていくために起こされる。藤野さんの弁では絶対に一人で一本は飲んでいるとのこと。午前中体調不良。
真理子からのメール注文品のゾーリンゲン万能はさみ・皮むきを買いに町に出る。良いのがあった。その後はメンスブルグの町にドライブして案内する。綺麗な町で観光名所の古いお城もあり、喜んでいた。

16:00KJCにて関係者の慰労パーティーがあり参加。バーベキューでソーセージが抜群に旨い。やっと気分が収まる。食後山口先生とサウナにいる。ここは男女兼用で期待していたが男ばかりだった。お世話になった方々に挨拶し、ホテルにて荷物整理。双子の兄弟がわざわざお土産をホテルまで持ってきてくれた。コソボ国から戦争を逃れて11年前に来たとのこと。顔はそっくりなのだが年は違うツィンズだった。昨日の件もあり早々と床につく。

日本の友人に送った感想文

拝啓、ドイツ国ラベンスブルグ市サマーキャンプ報告。
中南米指導を終え、先生方とは別れ一路ヨーロッパはチューリッヒ空港につきドイツ入りしたところ、何とスーツケースが出てきません。問い合わせたところまだマイアミにあるとのこと。仕方なくスイスエアーラインよりお詫びの一泊セットを頂き、ドイツでの指導に入りました。3日間パンツなしで過ごしましたが割りと快適です。さて、ドイツのサマーキャンプのご報告申し上げます。ここはスイス、オーストリアにまたがるボーデン湖の近くの風光明媚な田舎町です。約800人の空手愛好家が集まる5日間の合宿で、今回はアメリカで大流行しているタイボウの創始者ビリー・ブランクスもジョイントし400名の申し込みがソールドアウトしました。合計1200人の合宿はスケールが大きく、受講者には世界一流のヨーロッパコーチから学べる素晴らしいスケジュールのセミナーです。
小生も地元でスターであるグンター・モアー氏から要請を受け、今年で10年目になります。ヨーロッパ人の空手道に対する真摯な態度、取り組み姿勢、高齢でもやり続ける意欲などは日本人が逆輸入すべき、武道精神でしょう。おもしろいことは子供達に気合いを入れろと言うと「キアイ」と叫ぶんですが、幾ら言っても直しません。
小生は「どうぞ宜しくお願いします」「どうも有り難うございました」と日本語で全員に指導しますが、ずいぶん多くのドイツ人が覚えてくれました。ここでは心温まる人達とのフレンドシップに感謝しながら過ごしております。次回はアメリカはニューヨーク・レイクプラシッドよりご報告申し上げます。

福岡大学 監督 西村誠司 


8月5日(日)晴れ
06:00起床。ホテルをチェックアウト。
藤野・山口両氏のホテル代は一泊150マルク(9,000円)朝食付きで毎年泊まっていたプチホテルと違い、少し豪華なホテルで満足していたようだ。朝食を食べ、空手道場の父兄の方に送って貰う。
素晴らしい天気でボーデン湖が美しい景色を見せてくれ、山口先生は来年も訪れたいと漏らす。考えれば両人は初参加にもかかわらず一日4レッスンを受講し、ずいぶんエンジョイしていた。こちらのパーティーには最後まで付き合う体力はなかったが、ドイツ人のフレンドリーな態度に感動したようだ。藤野さんも頑なな人だったが最期には、中国人のチャンさん、ドイツ人のインストラクターから言い寄られて、困っていたがだいぶ適応できるようになってきたのでなかろうか?
別れを惜しみ、小生は9時間掛け、ボストンへ、両名はシンガポールでまた一日観光して帰国。ボストンでは15:30発のアルバニー行きが、天候のため飛ばず、航空会社を切り替えて、18:55発コンチネンタル航空を押さえる。何度もターミナルを行ったり来たりさせられ、何とか飛行機に乗り込むと5人しか居ない軽飛行機で、雨雲の中揺れまくった。隣の黒人がふれるたびに驚いてこちらを向くまで、一緒に怖がっていたら本当に死ぬかと思ってきた。しかし、今度は無事に着いたらオリンピックセンターの迎えのバスが居ない。悩んでいたら井垣コーチが居残っていてくれて、レンタカーで一緒に行くことになったが、まだ天候のために着いていない選手が居て、更に3時間待ってドライブして着いたときは午前一時だった。へとへと状態でセンターに入り、寝る。



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